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ドンキーコングJR.の歩みは重い / FC

 ドンキーコングのゲームシステムを受け継ぎつつ、ドンキーコングの息子が主人公という新たな視点で展開するアクションゲーム。それがドンキーコングJR.である。

 
 ドンキーコングが洗練されつつ、わかりやすいゲームで圧倒的な支持を受けたことから、続編であるドンキーコングJr.が同じ操作方法を継承したことは当然の流れである。そこに、蔦を登るという新たなギミックを搭載して、さらにゲーム性に広がりを見せようとしたところに任天堂のチャレンジを見て取ることができる。
 
 しかし、ドンキーコングJR.は難しいのである。まず、蔦を登る際に、2本の蔦をつかんでいると速く、逆に降りるときは1本の蔦だけをつかむと速いという操作がすでにプレイしていて軽い混乱を来すのである。もちろん、ドンキーコングで散々ジャンプしてきたプレイヤーにとって、この蔦という仕掛けは大した難易度のアクションではないのかもしれない。それでも、単純にはしごを昇り降りし、樽を飛び越えていればよかったドンキーコングからすると、相当レベルの高いアクションであることは間違いない。しかも、動く床からこの蔦をつかもうとすると、キャラクタの位置が微妙にずれて、蔦をつかみそこねたりすることさえあるのだ。これは、当時の子どもたちからすると、画面から見える情報と、自分の望む操作がダイレクトにつながっていなくて実に難しい。ときには、蔦をつかみ損ねて、納得いかない落下死を招くことさえあるのだ。

 
 さらに、2面のスタート地点からすぐのところに、謎のジャンプ鉄骨が配置されている。(ドンキーコングの75mで飛び跳ねながら落下死てくる、後のスーパーマリオにも登場する、飛び乗ると高くジャンプできる鉄骨である)このジャンプ鉄骨を上手く使うのが難しいのである。ドンキーコングJR.が、鉄骨に飛び乗ると同時に、タイミングよくジャンプボタンを押せば、見事ジュニアは大ジャンプを行い、2面のルートをショートカットできるのである。しかし、このタイミングが難しいのだ。失敗すれば、移動する床に頭をぶつけて落下死である。この意地悪な仕掛けに何度泣かされたことか……
 
 そして、ドンキーコングJR.のキャラクタは、前作ドンキーコングのマリオに比べると体が大きくて敵に当たりやすく、手足をバタバタと忙しそうに動かす割には、あまり歩みは速くないのである。しかも、歩く度に発せられる効果音も、低音が効いていてなんだかドタバタドタバタと鈍重に動き回るイメージがつきまとうのだ。いや、実際に画面を見てみると、そんなに遅く移動しているわけではないのだが、ゲーム中の様々な要素が複合的に、ドンキーコングJR.の重量感を醸し出していて、そこに思ったように利用できない画面中のギミックが重なると、なんとも言えない要領悪いゴリラの誕生となってしまうわけだ。
 
 決して、ドンキーコングJR.が面白くなかったわけでもないし、実際僕もかなり遊んだつもりではいるのだが、やっぱりドンキーコングと比べると、そんな「重くて鈍いゴリラ」のイメージが強いゲームがドンキーコングJR.であるわけだ。
 
 しかし、これは逆に言えば、ドンキーコングJR.がゴリラであるということをゲームの中で実に明確に描き出した任天堂の表現力の素晴らしさとも言えるのかもしれない。