緊張感との戦い / ダックハント / FC
競技としての射撃……そんな印象の1本、「ダックハント」である。
まだまだビデオゲームが世に出る以前、ゲームセンターには物理的なギミックを施したゲーム機が多数あった。ナムコのシュータウェイもそのひとつである。
シュータウェイは、実銃と見紛うばかりのライフルを備えた大型ゲーム機である。森と空が描かれたスクリーンに、クレーを模した光が映し出され、それをライフルで撃ち落とすゲームである。当時、このゲームが好きだった僕もは、何回もこのゲームにチャレンジしたが、如何せん銃が大きいことと、クレーの動きが素早いこともあり、小学生の僕にはかなり難しいゲームだった。
ファミコンのダックハントを初めてプレイしたとき、そのシュータウェイがすぐに思い浮かんだ。ダックハントはその名の通り、カモを撃ち落とす「狩猟」ゲームであるが、プレイした感覚はクレー射撃に勤しんだあの日を思い出させる、スポーツ感覚(?)満載の光線銃対応ゲームだ。クレーと同じく、カモがいつ飛び出してくるかはわからない。常に緊張を維持し、反射のスピードで対応できるぐらいの心構えが必要になる。しかも持ち弾は3発だけ。この緊張感がダックハントというゲームの魅力である。わずか数秒のカモ撃ちだが、一瞬で決まる勝負のために神経を研ぎ澄まさせるプレイスタイルのなんと潔いことよ。
そんなストイックなゲーム性故か、ダックハントのキャラクタは極めて可愛らしく描かれている。撃ち落としたカモを持ってきてくれる愛犬は、ときに愛嬌豊かに、ときに失敗したご主人を笑うコミカルな姿を見せてくれて、この真剣をすり減らすゲームの雰囲気をなごませてくれる。
シュータウェイで苦戦した僕としては、猟犬とともに射撃ができるダックハントには、わずかな安らぎを見出すことができた。いや、それでも難しいゲームだ。