2月の読書まとめ
今月の読書をまとめてみた。一部ネタバレもあるので注意
2016年2月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:4286ページ
ナイス数:14ナイス
理由の感想
ミステリーとしては珍しくない規模の殺人(しかもその描写にはまったく重きが置かれていない)に、実は数多くの人間がそれぞれに事情を抱えながら絡み合っている事実を、事件後のインタビューという形式で書き綴り、群像劇として完成させた珍しい作品。事件解決に向けてカタルシスを得る推理小説として読むと、膨大なページ数が重荷になることだろうが、登場人物の人生観や人柄、時代を反映した考えをひとつひとつ「うんうん」と納得しながら読むと、これが意外に味があって楽しいのである。
読了日:2月29日 著者:宮部みゆき
天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)の感想
久々にSFを読んだ。事故に遭遇した宇宙ステーションを、練られた設定と緻密な描写で手に取るようにわかるものとして表現してあるのがとにかく見事。そこに、それぞれに訳ありの多彩な登場人物を投入しつつ、頻繁に視点を切り替えるテクニカルな構成で緊迫感を生み出すことに成功している。SF考証だけに頼らない、地に足がついた上質のSF作品。
読了日:2月28日 著者:小川一水
ケインズ―時代と経済学 (ちくま新書)の感想
ケインズの理論解説のみならず、その生涯についても触れていて、ケインズ経済学が生まれてきた時代的背景も合わせて読み解ける。数式の部分も含めて平易に書かれているので門外漢の自分にもすらすらと読めた。
読了日:2月27日 著者:吉川洋
経済の教科書 (洋泉社MOOK)の感想
リフレ派飯田泰之の主張をもっと読みたかった。お手軽ムック本だからあまり政治的な内容を伴わず薄口なのは致し方なし。
読了日:2月25日 著者:
ららら科學の子の感想
学生運動のまっただ中に中国に帰国、30年を経て再び日本を訪れた男が、浦島太郎のように時代を飛び越えた感覚をひたすら語ることで紡がれるストーリーが重厚である。派手な事件こそ無いものの、国家と時間というものの重みが実感できるつくりがよい。
読了日:2月24日 著者:矢作俊彦
原発ホワイトアウトの感想
「原発」の表題を冠してはいるが、内容は政治の裏舞台で蠢く政財官の癒着と駆け引きの実態である。メインとなるストーリーはフィクションであるが、所々に実際の政界における事件や動向、実在する著作物などを織り交ぜることで、リアリティを持たせる手法が興味深い。物語のプロットは単純で、取ってつけたような事件には拍子抜けするが、我々の国がどのような力学で動かされているのかを垣間見ることができる。
読了日:2月16日 著者:若杉冽
おとめの流儀。の感想
現役大学生作家による3作目。中学校でなぎなたに打ち込む少女の爽やかで時折ミステリアスな物語。軽いタッチで語られるストーリーは、ともすると深みに欠ける感があるものの、それこそがこの作品の持ち味だったり、作家の若々しさの表れだったりするのだろうと好意的に受け取れた。作者の住む長野県松本市が舞台の小説であるが、キノコやSuicaのエピソードはその土地を知るものならくすりと笑ってしまうところ。
読了日:2月12日 著者:小嶋陽太郎
モノが少ないと快適に働ける: 書類の山から解放されるミニマリズム的整理術の感想
流行りの「物減らし本」こういうシンプルなものに人は憧れる。しかし、普段ものすごい物量の書類を処理している人間には、これぐらいできなくてどうするという感想を持つことだろう。そして仕事を効率化するために次々と紹介される文具たち…結局著者はかなりのモノを買っていることが読み取れる。その矛盾が楽しめた1冊ではある。
読了日:2月11日 著者:土橋正
工作少年の日々の感想
「どうしようもない忙しさ」に出会ったことがなく、自宅の庭にミニ鉄道を敷設、愛車はポルシェとビート…国立大学の教授とはかくも優雅な商売か。そんな作者の、工作のみならず日々の生活に対するちょっと変わった視点を綴ったエッセイ。つまらないオヤジギャグと、正直読みにくいJISに則った長音省略語を差し引いても、クスリと笑いながら楽しめた。
読了日:2月11日 著者:森博嗣
さっさと不況を終わらせろの感想
不況下において、景気回復のための支出をできるのは政府だけであるという、ごく当たり前のことを論じているクルーグマン。しかし、ここ日本においては、根拠なき緊縮論者によるセンスのない政策によって、景気回復とはまったく逆方向に驀進中である。最近バカな芸人が、「借金大国の国家公務員も給与UPするのはなんで〜」などと発言して失笑を買っていたが、そういう感覚的かつ無責任な発言をする不勉強な輩にこそ読んでもらいたい本。
読了日:2月9日 著者:ポール・クルーグマン
脳に棲む魔物の感想
精神に異常を来し、徐々に正気を失っていく主人公である著者が、自らしたためたノンフィクションの闘病ドキュメント。自分が自分でなくなり、意識すらはっきりしない状況にあったにも関わらず、これだけ克明な記録を残せたのは、著者の新聞記者という職業性と、全身全霊を賭けて治療に臨んだ家族のメモがあったため。物語的に巧みに仕掛けられたクライマックスが無くとも、悪化する病状と、医療による原因究明のせめぎ合いが緊張感にあふれていて読み応えがある。医療の凄さと限界、そしてときに患者に対して無神経であることの描写も秀逸だ。
読了日:2月4日 著者:スザンナ・キャハラン
世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析の感想
4年前の本であるが、ここに書かれている「ヤンキー的なもの」の状況は現在さらに強化されているといえる。先見性があったというよりは、ヤンキー的なものに関する普遍的、本質的な分析が鋭かったというべきであろう。奇しくも最近組体操容認の立場を表明して話題になった義家弘介の反知性主義、理論や分析を敵とみなす姿勢をヤンキー的なものとして的確に解釈している点も興味深い。
読了日:2月2日 著者:斎藤環
金持ちは税率70%でもいいVSみんな10%課税がいい: 1時間でわかる格差社会の増税論の感想
クルーグマンの引用する『租税は文明社会の対価』という言葉に尽きる
読了日:2月2日 著者:ポールクルーグマン,ニュートギングリッチ,アーサーラッファー,ジョージパパンドレウ
遊びのチカラ ナムコの高付加価値戦略の感想
古い本だがナムコに興味があり読んでみた。全盛期のナムコの勢いは伝わってくるが、それだけに今の状況と比較して残念な思いを抱いてしまう。昨年食べたナンジャタウンの餃子は不味かった…
読了日:2月1日 著者:小山信幸
僕が18年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のことの感想
著者の学歴と分析力を持ってしても組織人としてうまく立ち回れなかったとすれば、それは著者の人間性に(企業においては)改善すべき点があったとしか思えず、それが文面からも伝わってくる。プライドの高さばかりを感じさせる文章。たかが18年で会社をやめざるを得なかったとすればそれも納得がいくことである。上司や取引相手に気を遣うなんて普通のことすぎて、この著者ほどこだわるところじゃないじゃないか。
読了日:2月1日 著者:和田一郎
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