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STEELER / STEELER

HM/HR アルバムレビュー ★★ shrapnel 長文

 マイク・ヴァーニーに見出されたイングヴェイが、単身アメリカに渡ってデビューのために加入することになるバンドの1stアルバム。
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 STEELERはナッシュビルで81年に結成されたバンド。ロン・キール(vo)、マイケル・ダニガン(g)、ティム・モリソン(b)、ボビー・マークス(ds)らが初期メンバー。アルバム製作時は、リック・フォックス(b)、マーク・エドワーズ(ds)、イングヴェイ・マルムスティーン(g)にメンバーが交代している。楽曲は、最初のメンバーで作られたものにイングヴェイのギターを加えたもの。
 
 原曲はオーソドックスなアメリカンHRであり、ちょっとがなり気味に歌うロン・キールの声と、この頃の流行りのサウンドプロダクションで、オーバーにかけられたディレイがB級臭さを醸し出してはいるものの、メロディアスで悪くない楽曲が多い。その曲自体にイングヴェイらしさは微塵も感じられないのだが、イントロやソロに取ってつけたように挿入されたイングヴェイによるクラシカルなフレーズが、どちらかと言えばあっけらかんとしたアメリカンな曲調に不思議な化学変化をもたらし、後のイングヴェイによるオリジナルの楽曲とも違う、今となってはどこでも聞くことのできないSTEELERならではのオリジナリティが発揮されているのは今聞いても興味深い。
 
 アルバムの1,2曲目は先に作られた曲なのだろうか。楽曲が固まっていて、イングヴェイの個性が入り込む余地はほとんどなく、ギターソロでこそ高速ピッキングを聞かせるイングヴェイだが、どちらかと言えば、あくまで他人のアルバムに参加してソロを弾きまくっている以上の印象は感じられない。しかし、3曲目"No Way Out"から雰囲気は急変する。アコースティックなフレーズからアルカトラス的なイントロにつながる展開は明らかにイングヴェイの味が出ているし、そこから本来の曲調へのつなぎがぎこちない辺りに、このバンドに解決できなかった課題が集約されているとも取れる。この曲においては、ギターソロにおいてもアルカトラス時代を継承しているかのようなドラマティックなフレーズが聞かれるのもおもしろい。
 
 そして4曲目"Hot On Your Heels"では、やはりアコースティックギターで、今度はスパニッシュ的な速弾きから弾きまくりのエレキギターに繋げて、まるで後のイングヴェイのライブで見せるギターソロのような流麗なプレイを聞かせてくれる。スタジオアルバムでありながら、実に曲の2/3がギターソロという、とんでもない構成に仕上げてしまっている辺りもやり放題のイングヴェイらしいではないか。
 
 他にも随所にイングヴェイらしいコード進行や手癖、スケールが登場するのだが、アルバムを締めくくる"Serenade"は、やはりアコースティックギターによるアルペジオが美しい、イングヴェイらしいアレンジのバラードだ。ただ、ロン・キールのヴォーカルは、あまりこの手のしっとりした曲に適性が無いようで、実に残念な感じになってしまっているところが、アルバム1枚で終わりという運命を暗示している。
 
 トータルで見て、残念なアルバムであることは否めないが、記念すべきイングヴェイ登場のアルバムで、そのギタープレイが衝撃的だったことは十分伝わってくる。サウンドプロダクションも悪いものの、その後発売されたスウェーデン時代のイングヴェイ自身の録音によるデモテープに比較すれば、その音質には雲泥の差があって、これは実際にライブが見たくなるバンドであったことは想像に難くない。