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★(Black Star) / David Bowie

12月ということで、2016年の非メタルな音楽をいろいろ聞いてみている。
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 まずもって、このアルバムがデヴィッド・ボウイの没する2日前に発売されていたという事実がすごいし、そこからは、おそらく自身の生命の限界をある程度感じながらこのアルバムを作っていたボウイの心理状態を察することができて、とうてい冷静な姿勢で評することなど不可能な作品であることは認めなければなるまい。
 
 残された時間が少ない中で(しかもその残り時間もわからぬまま)作品を完成させるということは、その作り込みにかけられる時間も把握できないわけであるが、そんな中でこのバリエーションに富んだ楽曲群と、入念に作り込まれたアレンジの妙は一体どういうことなのか。評価のすべてをボウイの死と結びつけることは、まったくもってフェアな態度ではないが、それでも死と向き合うという究極の緊張状態が、新しいものに挑戦しようとするアティチュードを生み出していることを感じずにはいられない。
 
 ジャズ・ミュージシャンを起用したという演奏はどれも鬼気迫るテンションを保ち、そこに決して独りよがりにならないポップさを持ちながらも不思議な浮遊感を生み出すヴォーカルが乗っかってくる。コンパクトにまとめられたアルバムは、贅肉を削ぎ落とし、美しい部分だけを抽出した芸術作品である。

 遺作にして完璧なアルバムだ。
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