読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

PlayLoud!!

Since1997

恐怖を彩る赤 〜サスペリア HDリマスター/パーフェクト・コレクション Blu-ray

BD 映画 長文

サスペリアのBDを買った。今回は論旨も通ってなくて徒然なるままにだけど、サスペリアの好きなところを書いてみた。サスペリアはダリオ・アルジェント監督、1977年公開のイタリア映画。(ネタバレあり注意)

 
 最初にサスペリアを見たのは小学生の頃。なぜかひとり家で留守番をしているときに、テレビで放送していたのを偶然見た覚えがある。

 
 初めて見る映画であったが、主人公のスージー・バニヨン(ジェシカ・ハーパー)が空港からバレエ学校までたどりつく冒頭のシーンだけで「これはヤバい映画だ」という予感に満ちていて、ホントに怖かった。

 
 これはもちろん、ダリオ・アルジェント監督による演出が秀逸だったからこそである。これから繰り広げられる惨劇の予兆を、画面の色彩や音楽、俳優の演技で雄弁に語っているからこその怖さである。
 そして、その恐怖の象徴であるかのように、劇中のバレエ学校は真っ赤である。その赤は、これから流される血を暗示しているし、この後も照明や小道具、大道具にはふんだんに赤色が用いられ、映画全体を赤が支配している。

 
 ミステリー作家の綾辻行人は、彼の小説『緋色の囁き』のあとがきで、この小説のインスピレーションがサスペリアから来ていることを明かし、赤にこだわった作品作りについて言及している。*1

 
 綾辻行人の比較的初期からのファンであった私などは、その文章に大いに共感し、私の中でサスペリアに対する作品観はさらに強化され、その後も意識的にこの作品に接する態度を醸成する要因となった。

 
 サスペリアと言えば、ゴブリンの音楽も度々話題になる。プログレッシブ・ロックバンドに分類されているゴブリンだが、サスペリアの劇伴ではロック的要素よりもホラーな雰囲気に重きを置いた曲作りが為されている。画面の赤色とあいまって、いかにも禍々しいサウンドが特徴的だ。
www.youtube.com
 幸運にも、2011年にそのゴブリンの演奏を実際に目の当たりにする機会に恵まれた。「イタリアンプログレッシヴ・ロックフェスティヴァル秋の陣」というロックフェスでゴブリンが来日したのである。全員オリジナルメンバーというわけにはいかなかったが、キーボードのクラウディオ・シモネッティは健在で、サスペリアのテーマではあの怪しげなうめき声のような歌(?)も披露していた。

 
 ちなみに、ゴブリンは今月の29日も来日公演を行う。なんと、サスペリア全編上映で、BGM生演奏というものすごい企画である。残念ながら今回は見に行けないのだが、非常に興味深いライブであることは確かだ。

 
 そんなサスペリアだが、ここへ来て突如パーフェクトコレクションと銘打ったBDが発売されたのである。
www.amazon.co.jp
 
 実は、過去にLD、DVDとサスペリアを購入してきたが、なぜか過去2回ほどBD化されたときには「あとで買えばいいか」と見送ってしまったがために、廃盤の憂き目にあっていたのだ。しかし、今回のBDは何の神の導きか、HDリマスターした上にTBS版、テレビ東京版、旧DVD版の3種類の吹き替えを含む完全版を謳っており、偶然とは言えこれまでBDを買い逃していたことがかえって幸いだったとすら感じさせる内容となっている。

 
 さて、そんなわけで久々に本編を通しで鑑賞。テレビ東京版吹き替えで楽しんだが、この吹き替え版は初めて。スージーの声が若々しく吹き替えられていてよい。そして驚くほどシャープで美しい画質に感嘆。これが最新技術の力か、と感激することしきりである。

 
 バレエ学校に入学してくる主人公のスージー・バニヨンは、設定では18才ぐらいらしいが、当時スージー役を務めたジェシカ・ハーパーは27才。それが、画面では全然18才でOKな感じなのである。見た目にもすっごいスレンダーで、思わず見入ってしまう。

 
 サスペリアはもちろんホラー映画なのだが、ダリオ・アルジェントの趣味なのか、当時彼が作っていた他の映画の影響のためか、多分にミステリー仕立てのストーリーになっている。特に、中盤からのバレエ学校の秘密に迫る謎解きが見ていて楽しい。化物から逃げ惑うような単純なホラーではなく、謎に対して果敢に挑んでいく主人公の姿が印象的な展開なのだ。

 
 スージーがバレエ学校の食事が怪しいことに気づいて、食べ物をトイレに投げ込む場面は、主人公が魔女の呪縛から解き放たれることのメタファーとして描かれていると同時に、スージーの聡明さが見え隠れするいいシーンである。

 
 また、真っ赤な照明の中で、登場人物の顔には青い照明を当ててコントラストを出す演出も多用され、邪悪な存在の象徴としての赤と、日常を保とうとする登場人物の象徴としての青の対比が面白い。

 
 血の色が赤いのはもちろんであるが、その逆に映画の鍵となるアイテムが青色だったりして、色のコントラストが象徴的に使われている映画である。

 
 光の三原色を多用した色使いは、コダックのスリーパックというフィルムを使用したもので、このフィルムは3色に分かれていることで、現像段階での色の合成、強調を行っている。*2
 
 今回BDで見てみると、やっとまともな映像というか、特に赤色に起因する色のにじみから解放されたくっきり画質で、昔のVHSやLDを「画質悪いなー」と言いながら見ていたことがウソのようである。がんばってHDリマスターを発売してくれたハピネットには拍手を贈りたい。

 
 ところで、今回この記事を書きながら、いろいろネット上の情報を見ていたら、現在サスペリアはパブリック・ドメインの扱いになっているとか。詳細はわからないけど、またひとつこの映画に関する謎がでてきてしまった(笑)
 

 このおばちゃんが怖い……

*1:綾辻行人(1988)『緋色の囁き』祥伝社.

*2:矢澤利弘『サスペリアPART2/紅い深淵&サスペリアーダリオ・アルジェント、恐怖と色彩の魔術師ー』DVDサスペリアアルティメットコレクション付録ブックレットより